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OPECの追加減産を踏まえた石油需給・油価見通し

2023年 5月 22日

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主席アナリスト兼部長 調査事業部 桝本量平

4月上旬に発表されたOPECプラスの自主的追加減産を踏まえて、石油需給・油価見通しをレポートする。今回の追加減産は、(「サプライズ」などの報道もあるが)当面の供給過剰感に対処するファンダメンタルなものだと捉えている。一部には、今後の需給タイト感や油価100ドルなどの見解・報道もあるが、概ね需給はバランスし、油価も大きな上昇はないと、筆者は見ている。

第一に、簡単なレビューとして、筆者は昨年7月(当時ブレント109ドル)のレポートで、「ロシア産原油への制裁で(供給不足も)懸念されているが、データ上は今後、供給過剰に転じる。代替調達(販売)先などサプライチェーンが安定するにつれ、油価は下がる」としていた。その後、ロシア産原油はインド等に流れるなどし、昨年11月のOPECの日量200万バレルの協調減産にも関わらず、供給過剰感等により、(概ね筆者の予想通り)、3月にブレント74ドルまで下落していた。そして今回、日量116万バレル(ロシアの日量50万バレルを除く)の追加減産が発表された

第二に、今回のOPECの追加減産に関しては、(「サプライズ」など、様々な報道がなされているが)基本的には、足元および当面の供給過剰感(4ページの需給モデルで、黄色でハイライトしている)への処置という、ファンダメンタルなものだと、筆者は捉えている。この供給過剰感の背景として、
①ロシアの原油生産量が、(今年3月からの日量50万バレルの減産にも関わらず)、欧米の制裁があっても、インド等に販売できたことにより、昨年時点の想定ほど落ちていないこと(今回の需給モデル(下図)と昨年時点を比較することにより確認できる)、
②需要に関しても、もともと今年下期から目立った回復が予想されていたが(IEA等により)、中国や欧州の伸び悩みにより、穏やかな需要増に留まるだろう、と筆者は見ている(3ページの需給モデル)。

第三に、今後の需給バランスとしては、(一部(IEA等)には需給タイトを想定しているが)、概ねバランスした状況を、筆者は予想している。理由としは、(前述の)今下期の需要増が穏やかだろうこと、およびOPEC+の追加減産も、Voluntaryなものであることから、(需給が目立ってタイトになるほど)額面通りに実施はされない、と筆者は見ている。その結果、油価は(一部には100ドルなどとの予測・報道もあるが)、足元の水準から大きな上昇はないと、筆者は見ている。

本レポートは4月21日に、INPEXグループ内でリリースしたものを、社外向けにも公表するものです(下図はスケルトンのみとしデータは省略させて頂いております。ご関心ある方はお問い合わせ願います)。本稿などエネルギー見通し、Energy Transition動向、国内外エネルギー企業動向などに関する講演、寄稿、受託調査など対応しております。ご相談・お問い合わせは下のリンクより承ります。

(以上)

免責事項:本稿は著者の個人的見解であり株式会社INPEXソリューションズの見解ではありません。

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